枯らすまじ芍薬(しゃくやく) 

プランター観察日記

最近、少しずつ暖かくなってきていますね。春になれば、待ちに待ったとばかり色んな植物が芽吹くのでしょうが、寂しいながら、いま我が家のプランターで生存確認がとれているのはローズマリーだけです。

昨年、購入したブルーベリーは初夏に白い花を咲かせましたが、あれよあれよという間に花は落ちていきベリーが実ることもなく、今や木そものものが生きているかどうか微妙です。また、オリンピックのように4年ごとの間隔でしか顔を出してくれないミョウガも冬の時期は葉も全て枯れきってしまうので、暖かくなるころ無事に地中から伸びをするように葉を出すのかは現時点では何とも言えません。桔梗も地中で春の訪れを待っているのか仮死状態なのか葉のないうちはこちらも状態がイマイチ分からないんですね。

なので、亡くなった母ちゃんの為にお供えするお花は、特に寒い時期、プランターから切り花にできるものもなく今はもっぱらお花屋さんに買いに行っています。気温が低いとお花の持ちが良いので1~2週間に一度買いに行く程度です。逆に、夏はお花の傷みも早いので、できれば暑い季節に切り花にできるお花を桔梗以外でもプランターで育てたいなぁ…と何となく思っていたこの頃ですが……、 

ある時、生協のカタログを見ていると綺麗なお花が沢山載っていて、ついつい見入ってしまいました。お花を育てるために必要な説明、たとえば、この花は日陰でも育ちますとかの情報も添えられていたので、うちのプランター事情だったらどのお花をお迎えできるだろうかと購入モード寄りでカタログを見るうちに、やっぱりというか、ついにというか発注してしまいました。一番肝心なのは、日当たりなどのプランター事情よりも私、フミがお花の生育に必要なお世話ができるか、ちゃんとやれるのか、ということなんですが…(いままで、どれほどの被害者を出したんだ?と理性の天使が訴えております)、

あまりにも麗しい花の姿や色に、こういうお花がうちの花瓶にあれば、うっとりと魅入るだけでなく自分のココロのドロドロしたものも浄化されるんじゃないか…(母ちゃんにお供えする目的はどうなった?)、と、うちにお招きするにはいささかゴージャスな「変わり芍薬(しゃくやく)ソルベット」という芍薬を注文した次第です。

皆さんは芍薬の花をご存じですか。

実は私は芍薬を間近に見たことはありません。ちなみに、造園業を本業としつつも野菜作りが好きで販売もしていた父は庭や畑に様々な木を植えていまして、それらが咲かせる四季折々の花はバリエーションも豊かで子供心ながら鮮明に私の記憶にあるのですが、でも芍薬や牡丹の花は全く植えられていなかったと思います。だから余計に芍薬を育てたい気持ちになったのかも知れません。

ですが、ふと思うに、牡丹と芍薬ってお花は非常に似ていますよね?似ているのではなく、ひょっとしたら同じものなのでしょうか?どちらも大変美しい花ではありますが、どこがどう同じなのか又は何が違うのか私は全く知りません。 

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」といわれるほどですから、芍薬と牡丹は似て非なるものなのだとは思いますが……。(だって、同じ花なら「立てば芍薬座るも芍薬…」でいいわけですしね)

私の疑問、花がよく似ている芍薬と牡丹は同じものなのか?と感じられる方はきっと少なからずいらっしゃると思いますし、私も知りたかったので違いを調べてみました。※ちなみに英語圏では芍薬も牡丹も区別されていなくてどちらも「peony」(ピオニー)という名前で称されているそうです。

芍薬も牡丹もいずれもボタン科ボタン属なので似ていることはごもっともとしまして、分類は牡丹は樹木、芍薬は草なのだそうです。

植物の姿としては牡丹の方が花が大ぶりで、葉先にはギザギザがあり、芍薬にはそのギザギザがなく葉の全体が丸みを帯びているとのことです。またつぼみも先端が尖っている牡丹に対し芍薬は球形という違いがあるそうです。

開花時期については牡丹の方が晩春で、芍薬は初夏。…しかしながらその時々の気候によっては、ほぼ時を同じくして咲いたりするでしょうね。なお、芍薬の花にはバラのような甘く爽やかな香りがするそうですょ!ぜひその香りを早く楽しみたいものです♪♪

いかがでしたでしょうか。一見、同じように(同じに)見える牡丹と芍薬ですが、結構たくさん違いがあるものですね。調べてみたものの、その違いを全部覚えているのは私には無理っぽいです(→自分で調べておきながら?)が、 でも、牡丹or芍薬どっち?の見分け方のうちで、「バラの香りのする方が芍薬★」だけはインプットできそうです。

さて、牡丹と芍薬の比較が済んだところで前述のことわざ、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」にも触れてみたいと思います。どんな姿(立っても座っても歩いていても、つまりはどんな時)も美人さん、との形容なのでしょうが、近世の流行り唄からでた表現で後に成立する都都逸(どどいつ)の形式を備え、実際には神戸節(ごうどぶし)などで唄われていたそうです。

また、さきほど比べた牡丹と芍薬の違いですが、このことわざには二種類の花の育ち方や姿の相違を指しながらもいずれに対しても賛辞というのです。どういうこと?って感じですよね☆

まず、牡丹ですが育つにつれ枝分かれをして横に広がっていくことから、落ち着きのある清楚な美人に見立てられるのだとか。では芍薬はどうかと言うと、こちらは枝分かれをせずに真っすぐに伸びるので立ち姿の美しさを例えているそうなのです。なるほど、立てばスラリとした芍薬のような美人さんで、座ったら足とか髪とか着物の裾なんかが横に流れ、立った時とはまた趣の異なる美人さんっぷりというわけですね♡そして、歩く姿が美しいとされるユリのゆえんですが、もともとは花が風に揺り(ユリ)動くさまから和名がユリとなったそうです。風に揺られるような柔らかな動きで歩むその姿の可憐さがユリにたとえられたのかも知れませんね。

とっても綺麗な三種類のお花ですが、実は、美人さんに例えられる以外にも共通点があるんです。

どういう共通点だと思われますか?(ご存じの方にとっては他愛ない事かも知れませんが、私にはとても意外で、オドロキな共通点でした) 

実は、これらの綺麗な花は鑑賞にとどまらず薬としての役目も担っているんです。

「芍薬」は平安時代以前、薬草として日本に伝わりました。根には消炎、鎮痛、抗菌などの作用があるとされ漢方ではおなじみの生薬です。「芍薬」の「薬」のみならず「芍」という字も薬を意味します。まさに薬中の薬といったところでしょうか。葛根湯(かっこんとう)にも配合されていますから特に意識することなく葛根湯を飲んで、芍薬の効能にあやかったという方は少なくないと思います。

「牡丹」は、牡丹皮として根皮を用います。独特の香りがあり効能は鎮痛、鎮静など。桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などに配合されています。

「百合」は、生薬としては「ユリ」ではなく「ビャクゴウ」と読むそうです。ゆり根は茶碗蒸しやおせちに使われる皆さんにも馴染みの食材ですよね。また、甘く煮ることでデザートにもなります。薬というと、特に漢方は「苦い薬」というイメージがあったんですが、この百合が漢方薬に使われているなんてビックリです。効能は肺の熱さましや咳止め、また鎮静作用もあるのだそうです。なお、百合が配合されている漢方薬は麦門冬(バクモンドウ)や百合知母湯(ユリチモトウ)が挙げられます。

「立てば芍薬…」の言葉は、女性の美しい姿を花で形容するだけでなく、元々は生薬の使い方を例えたものである、とも言われています。(例えば、立てば芍薬というのは、(イライラと気が)立っている女性を意味し、芍薬により改善される、ということなんだそうです)すごいですね、そういう意味もあったんですね!

そんなこんなで、注文していた芍薬もうちに届き、ヒゲのような芍薬の根を鉢に植えてみました。

例年よりいささか寒さの厳しい今年の冬、芍薬が埋まった?鉢をベランダに置いていたのですが、本当にこの寒さでも大丈夫なのか、土はこれで良いのか、水をやったら凍ってしまわないか、段々と不安になってきて、父にもアドバイスをもらったりしていたのですが、結局父に芍薬を預け、しばらく父に芍薬の面倒をみてもらうことにしました。

気温が上がればヒゲみたいな根からニョキニョキと地上に芽を出してくれるのかも知れませんが、いかんせん気温が上がるにはもう少し時間もかかりそうです。芽が出るまでのその間、無事かな、大丈夫かなと私がヒヤヒヤ・ドキドキするのも大げさではなく、過去の幾度もの前科、発芽不発のまま終了の教訓?も手伝って「芍薬、枯らすまじ」とばかりに、今回は大事をとって父のもとへ一時避難してもらっている状態です。

一時避難どころか、このままずっと父のもとにいた方が芍薬にとっては幸せなのかもなぁ…と思いつつ、一方では芍薬の麗しい花を眺め、バラのような香りを嗅げることが楽しみで仕方ない私、フミなのでした。   

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