「ドライブ・マイ・カー」~65%のハルキスト~

冒頭の「ハルキスト」ってナニ?と思われる方もあるでしょうから、まずはそのあたりの説明を少し…。 ※サンキストではないですよ。

調べてみると、ハルキストとは…「作家、村上春樹ファンを指す語。村上春樹作品の独特の世界観を愛好し登場人物の考え方などに影響を受けている人物などを指すことが多い」とのこと。村上春樹さんをご存じない方や読書そのものに関心のない方には初めて目にされる言葉かも知れませんね。

私の趣味の一つは読書で、

「どんな作家が好き?」

と訊かれれば、好きな作家の一人として村上春樹氏の名前を出すと思いますが、ですが、ここ最近に出版された数冊は読んでいませんし、また、読んではみたもののジャンル的にあまり興味をそそられない…例えば本の内容がジャズにまつわるものだとジャズ好きにはたまらない、とても素敵な作品なのでしょうが、いかんせんジャズに縁遠い私にはジャズの素晴らしさやレコードの持つ独特の良さにピンとこず………

…と、いうわけで読むのは読みましたけれど、でも、なんかあまり記憶に残っていないなぁ…といった感じの作品も多少なりあって、そのあたりは村上春樹氏の作品は全て大好き!という純粋なハルキストから比べれば私のハルキスト度は65%ぐらいかなぁと思っています→まるでアキラ〇〇〇%みたいですね★   

さて、自称65%ハルキストの私ですが「ドライブ・マイ・カー」(原作は2014年出版の短編小説集「女のいない男たち」に収録の、同タイトル「ドライブ・マイ・カー」)が上映されるにあたって、昨年、上映の頃には色々映画館を探しました。映画化決定から、この作品を大きなスクリーンで観るのをとても楽しみにしていたのです。

前述の通り私はハルキストとしては65%ぐらいかなと思っているものの、でも短編小説はほぼ全ての作品を読み(一般的に世に出ているものは読んだと思う)、短編小説ならば仮にその内容が自分に疎遠な例えばジャズであってたとしても『お気に入り』に無意識のうちにすんなり分けられているようで、結果的にはハルキスト65%のうち64%は短編集が占めている気さえしています。ですので、映画化となった作品が短編集の中の一話となれば…、もう私の中では、これはすぐ観に行かねば~!!ってな感じになっていたんですね。     

ですが、比較的近隣にある大型ショッピングモールの、その館内にあるような映画館では一切上映されておらず、やっと見つけたと思ってもそこはけっこう遠方の映画館で、しかも上映されている映画館の数そのものがとても少なくて正直私は驚きました。

なぜならノーベル文学賞の話題となれば必ず「今回は受賞なるか?」と村上氏の名前が上がります。そんな彼の作品の映画化なのにいくらコロナ禍といえど、上映館そのものが少ないとは…。

私の中では早く、映画「ノルウェイの森」の違和感を払拭してくれる村上作品をスクリーンで拝みたいと思っていたのもあり、この「ドライブ・マイ・カー」が映画館ですぐに観られないとはビックリとガッカリがいっきょに押し寄せてくることとなりました。(※後日談になりますが、「ドライブ・マイ・カー」がアカデミー賞など複数の受賞が報道されて暫くの後、大型ショッピングモール内にある映画館をはじめ多くの映画館で上映となったようですね→私は全然知らなかったんですが)

話を戻しまして…。映画「ノルウェイの森」の違和感…という表現はいささか語弊がありますね。ミリオンセラーとなった小説の映画化ということで当時は相当に話題にもなり映画館に足を運ぶもファンも多かったと思われますし(私も映画館で観ました)。一体なにが違和感なのだ?と。

そう、違和感の大もとは、全体的には色っぽさが際立っているように感じられてしまう点でした。色っぽさ?それだけ?…あまりにも大ざっぱな言い回しかとは思いますが。(※なお、作品の非難がしたいのではありません、あくまでも私の個人的な感想です)

ちなみに、原作とは異なる媒体で作品が発表される場合には(例えば小説がドラマ化とか、漫画が映画化など…)、原作を知っている人間、殊にその原作のファンならば余計に大なり小なり思い入れが入るのはやむを得ないことで、私の場合、ノルウェイの森映画化にはその思い入れも無意識ながら強かったような気がしていて(驚かれるかも知れませんが、私、高校生の時に詩画集を読んで読書感想文コンクールで校内最優秀賞、その感想文は都道府県でも何かの賞を頂き…→自慢話じゃないですよ、で、翌年はなんとノルウェイの森の感想文を書いて提出したんですよね。学校の先生もびっくりしたんじゃないかなと思います。この時は何の受賞にも至りませんでしたが、読書感想文を書くにあたって、このノルウェイの森を私なりには結構読み込んだんですね)、

その強い思い入れは私の高校生時代から時を経てンン十年、映画化というニュースで更に膨れてしまったような気がします。

では、映画「ノルウェイの森」が私の中で少なからずどうあって欲しかったのかというと、、、「あんた一体なに様なんだ」とお叱りを受けても然りなのですが、ファンの(ファン度65だったとしても)身勝手な思い込みというか願望を述べさせて頂けるなら、、、際立つ色っぽさを少々薄める為にも、、一つ目には主人公の彼女、直子の保護者的存在でもあるキーパーソン、レイコさんについて映画では美人で身のこなしもスマートな人物像になっているような感が否めなく、できれば小説のように皴でさえチャーミングな、性別を超えた魅力の部分をもっと全面的にだして欲しかったなぁ、、と。そして二つ目には(二つもあるのか!とお怒りのハルキスト様、ご容赦下さい…)、食べ物のシーンが殆どなかったのではないかな、美味しそうな料理、美味しそうに食事をするシーンをもう少し出して欲しかったなぁ、という点です。 

なお、ノルウェイの森の小説の中ではレイコさんと主人公トオルが納屋の中でブドウを食べる場面があります。ある時トオルがレイコさん自身の話を聞きたいと言い、レイコさんがトオルの要望にこたえた格好で納屋に二人きり、彼女の身の上話的な内容をレイコさんがトオルに語るのですが、その際、レイコさんが収穫して間のないみずみずしいブドウを「これ美味しいわよ」、とトオルにも勧めます。レイコさんの話自体はかなり重いというか濃いものなのですが、新鮮なブドウを口にして皮を地面にぷっと出したりする描写や納屋の雰囲気が、まるでレイコさんの話を私もその場で聴いているかのような臨場感へといざなってくれるのです。完全に私の個人的な感想ですけどね★(ノルウェイの森という小説を読んだことのない方にはネタバレになるので小説の詳細な説明は割愛させて頂きます)      

映画「ノルウェイの森」で映画監督ならびに作り手側が観客に伝えたかったメッセージは何ぞや、と考えた時、私(観る側)が抱く映画「ノルウェイの森」は小説の様にこうあって欲しかった、こんなのはイヤだというのはまったくもって子供の駄々のようなものだとは思うのですが、、、確かに私の思い描くレイコさん像は小説の中だけに留めるにしてもやはり食べ物または食事のシーンは一つぐらいはババーンと魅力的に出して欲しいなぁと思ってしまうのです。

なぜなら、村上春樹作品の中では登場人物が料理をしていたり、あるいは食事をしていたり、飲食に関わる場面も少なからず出てきますが、どれもとても美味しそうで(私の食い意地のせい…?)、不思議とそれらを食べたくなってしまいます。その料理については味覚に関しての卓越な表現がなされているからなのか、またはもっとさらに前の段階から美味しさが伝わるような伏線が張り巡らされているのかは分かりませんが…。

※村上春樹氏の小説に、とても美味しそうで魅力的に登場する料理の中でもパスタとサンドイッチは頻度も高いような気がします。  

       パスタ

ともかくも、ノルウェイの森でも思い浮かぶ食事シーンは色々ありますが(直子の療養先で食事をとるレイコさん、ミドリが自宅で調理をする場面…etc)、やはり主人公トオルの恋人(直子、ミドリ)と同等またはそれ以上の重要な人物であるレイコさんと一緒にブドウを食べながら話していた場面が、そのレイコさんの話の内容も込みで私にはとても印象深いんですね。

ただ、人の感じ方、感受性や価値観も多種多様ですから、一つの作品について他人がどう思おうが、自分が何を感じようが全くの自由で、そういうことに正しいとか正しくないとか、どうあるべきとかを論じるのは全くのナンセンス。     

65%ハルキストな私の要望としては、できれば今後村上作品が映像化される場合には、作品内に食べ物や食事シーンがあればそのあたりも映像に含めて頂きたいなぁと思う一方で、そういうこだわりはそれぐらいにしておいて、映画館では観ることが叶わなかった「ドライブ・マイ・カー」をレンタル店で借りてきたのでゆったりと観たいと思います。

※村上氏の小説に馴染みがありそうな画像を貼りましたが、久しぶりに昔の小説も読んでみたくなりました♥ 

皆さんのお気に入りの村上作品は何ですか?おすすめがありましたら、よかったら教えて下さいね!

…ちなみに短編小説なら私は『ドライブ・マイ・カー』収録の「女のいない男たち」の他に、「回転木馬のデッド・ヒート」「カンガルー日和」「夢で会いましょう」 が好きで、小説なら「スプトーニクの恋人」「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」、そして(長編)小説の中で最も好きで映画化にもなって欲しいのが「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」です。※まだ読んでいない小説は2冊ほどあるのでそれらを読んだらランキング?は変わるかも知れませんが…。

ちなみに…、が長くなりました、失礼しました。

村上春樹氏の作品についていろいろ思いを巡らしていると、たまにはまったりとした時間の中で本を読みたくなってきました。どの本を読もうか迷うところです。   

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