20年ほど昔のことですが、当時の私は大阪市内のオフィス街で働いていて、平日は電車、たまにあった日曜勤務の際にはマイカー通勤をしていました。
日曜といえど車の方が電車よりも通勤時間は倍かかってしまうというネックはありつつも、職場で必要な備品があれば嵩張るものでも購入して車に積んで出勤でき、また仕事帰りには好きに寄り道をして帰ることも出来たので、私にはマイカー通勤のできる日曜は有難いくらいでした。
そのようにある日の日曜出勤のおり、職場に必要な買い物を済ませ荷物を車に乗せようとしていた時のこと。
大量の荷物を抱えながら私が車のドアを開けた直後、ドアの角が肋骨を直撃し、その激痛と共に私の目にはチカチカとした瞬きが現れました。痛みが起こった瞬間、目の中に幾つもの星というか、火花のようなものがはじけたのです☆☆☆そして、痛みのあまり妙な体勢をとってしまったのか、体の中でバリッ!という音も響きました。この時、稲妻が体を貫いた様な感覚も…。
車のドアが肋骨を直撃してから稲妻の轟きまで、文字にすれば数行の内容も実際には一瞬のうちに起こった出来事でした。
体の中で木をねじり折るような「バリッ!」という音が聞こえたそれからというもの、私の動きはぎこちなく、まるで壊れかけのロボットのようになっていました。どうやら腰を傷めてしまったようなのですが、腰と離れた部位であっても、例えば首であれ腕であれ急に動かしたり又は妙な動かし方をすれば、すぐさま腰に痛みが走るので、右の方を見たいなら、首だけを右に曲げずに体ごとゆっくりと右を向く、何かを持つ時もなるべく目的の物に先ずは体全体を近づけてからといった風に、全ての動作にはそろりそろりと慎重かつ緩慢さが求められました。
ギクシャクした動きの壊れかけロボット状態の私は、くしゃみや笑うことはもちろん呼吸すら痛みが伴うことに不安を覚え(いよいよロボットも廃棄寸前?)、整形外科へ行くことに。
医師からは「一人でよくここまで来れましたね、かなり痛むでしょう?急性腰痛、いわゆるぎっくり腰ですね。」と言われ、これがあの有名な「ぎっくり腰」なのか、とびっくりした私。
ぎっくり腰はものすごく痛くて動けない、一度ぎっくり腰になってしまうとクセになるなどぎっくり腰についての話は周囲から色々と聞いてはいたものの、私には無縁とばかり今までは聞き流していました。なので、自分がなってしまった事は本当に驚きではあったんですが、それ以上に驚いたのは痛みのその強さ。ぎっくり腰になる直前、車のドアが私の肋骨に直撃、強烈な痛みは火花が散るほどだったのに、ぎっくり腰を前に肋骨の痛みは完全に鳴りを潜めてしまっていたのです。
ちなみに、この時のぎっくり腰はコルセットを巻いたり湿布を貼ったりしても1か月ほど痛みが続きました。
完治して以降は、ぎっくり腰はもうコリゴリとばかりに腰には特に用心して過ごすようになります。例えば、床にある重い物を持つ時は前かがみではなく、腰を落とすなど姿勢にも注意を怠りませんでした。私自身、「ぎっくり腰は繰り返す」という周囲の声を多少なり気にしていたのかも知れません。
そうこうするうちに、初めてぎっくり腰になってから何十年も過ぎ、もう私はぎっくり腰にならない、ぎっくり腰とは完全にオサラバだと思うようになっていました。用心の甲斐あってか仮に腰痛が生じても全て軽度で済んでいたからです。
それなのに。
先日、出勤前に身支度を整えている時、靴下を履こうにも突然に痛みが走り、足が上がらなくなってしまいました。足はそのままにして今度は上半身を足に近づけようと試みますが、これもムリ。洗顔時の前かがみの姿勢もキツい。下にあるものは体を屈めて拾えない。(家にマジックハンドがないことが悔やまれました(涙))。…これらの症状は全て昔に難儀をしたあのぎっくり腰と同じでした。
ただ、今回ぎっくり腰になった原因については自分でもさっぱり見当がつきません。靴下を履こうとした時に痛みを感じ、その直前には浴室の窓を閉めていただけ。窓閉めの姿勢や動作が直接の原因だとも思えませんでした。
また、前回初めてぎっくり腰になってしまった時の様に体の中でバリッというような不吉な音もなければ、雷に貫かれるような感覚もありませんでした。私自身、もしまた再びぎっくり腰になってしまったなら、その時には「ぎっくり腰の前兆」のような、最初の時と同じような派手な音や光が体の中に起こる様な気がしていたのですが…。
しかしながら調べてみると、1番最初に生じたようなぎっくり腰の症状が、2度も3度も同じように起こるとは限らず、予期せず起こってしまうことが「ぎっくり腰」と呼ばれるゆえん。ただし、ぎっくり腰は予期せず突然起きるものとはいえ、その原因となるものは緩やかに進行、少しづつ溜めてしまった筋肉疲労が許容量を超えることにより腰痛として現れるとのこと。
自分はもうぎっくり腰になることはないんだ、と今まで高をくくっていたのは根拠もない楽観に過ぎなかったと思い至ることとなりました。
前述の通り、20年ほど昔に初めてぎっくり腰を経験した際には、その直前に肋骨をガンッと強打、目の中でスパークが起こり☆、肋骨の痛みに思わず体を捻ってしまった瞬間、今度はバリッと裂ける音が体内に響き、雷鳴轟く感覚が生じ、その直後の強い腰痛にこれがぎっくり腰の痛みかと驚いたのですが、実のところ私にはその痛み以上に、派手な音や光が体内のあちこちで起こっていたことの方が衝撃的でした。
初登場や新発売など初めてのお披露目に関しては、注目を集める為にインパクトのある映像や効果音(音楽)でCMを流すように、人々の印象に残るべく凝った演出で宣伝されるのは当然なのですが、20年ほど前に私がぎっくり腰になった時には、初めてのぎっくり腰ということで、その登場も稲光や派手なBGMと共にとても華々しいデビューとなってしまったのかも知れません。
ただし私の場合、華々しいデビューを飾ったのは動きもギクシャクとした壊れかけのロボットだったわけですが…。
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